2026年10月5日(月)看護師クイズ 回答

概要 68歳男性。突然の胸痛で救急搬送された。12誘導心電図でⅡ、Ⅲ、aVFにST上昇を認める。血圧82/54 mmHg、脈拍58回/分。肺野に湿性ラ音はなく、頸静脈怒張を認める。この時点で特に疑うべき病態はどれか。





A.心室中隔穿孔
B.急性左心不全
C.右室梗塞の合併
D.急性心膜炎



回答

C.右室梗塞の合併

解説

右室梗塞は、急性下壁心筋梗塞に合併することが多く、特に右冠動脈近位部の閉塞で生じやすい病態です。右室の収縮機能が低下すると、右室から肺循環へ送り出される血液量が減少し、その結果、肺静脈を介して左室へ戻る血液量、つまり左室前負荷も低下します。そのため、左室そのものの収縮能が比較的保たれていても心拍出量が低下し、低血圧やショックを来すことがあります。

臨床で重要なのは、「低血圧」「頸静脈怒張」「肺うっ血が乏しい」という所見の組み合わせです。右室で血液が停滞すると右房圧・体静脈圧が上昇するため頸静脈怒張を認めます。一方、右室から肺循環へ送り出される血液量が減少するため、典型的な左心不全のような肺うっ血や湿性ラ音が目立たないことがあります。したがって、下壁ST上昇型心筋梗塞の患者が低血圧を呈しているにもかかわらず肺野が比較的クリアな場合は、右室梗塞を積極的に疑う必要があります。

心電図ではⅡ、Ⅲ、aVFのST上昇を認める下壁梗塞に右室梗塞を合併することがあります。特に右室梗塞が疑われる場合には、通常の12誘導心電図だけでなく右側胸部誘導を追加します。なかでもV4RのST上昇は右室梗塞を示唆する重要な所見です。下壁梗塞を確認した時点で血圧低下や頸静脈怒張があれば、早期に右側胸部誘導を記録することが重要です。

また、右冠動脈は房室結節への血流供給にも関与することが多いため、右冠動脈領域の下壁梗塞では洞性徐脈や房室ブロックなどの徐脈性不整脈を合併することがあります。そのため看護師はST変化だけを見るのではなく、心拍数、房室伝導、血圧、意識状態、尿量、末梢冷感などを合わせて評価し、心拍出量が維持できているかを継続的に判断する必要があります。

右室梗塞の循環管理で特に重要なのが「前負荷」です。右室収縮能が低下している状況では、十分な右室充満を確保することで心拍出量を維持している場合があります。そのため、静脈還流を過度に減少させると右室拍出量がさらに低下し、続いて左室前負荷も低下して血圧が悪化する可能性があります。硝酸薬など前負荷を低下させ得る薬剤は、特に低血圧を伴う右室梗塞では慎重な判断が必要です。

ただし、「右室梗塞=必ず輸液」という単純な理解にも注意が必要です。輸液は低容量が疑われる場合に検討されますが、過剰な容量負荷は右室をさらに拡張させ、心室間相互作用によって左室充満を妨げ、かえって心拍出量を低下させる可能性があります。血圧、頸静脈圧、肺うっ血、心エコー、末梢循環などを総合的に評価しながら循環管理を行うことが重要です。

この問題で覚えておきたいポイントは、「下壁梗塞+低血圧+頸静脈怒張+肺野が比較的クリア」なら右室梗塞を疑い、V4Rを確認するという臨床的な流れです。さらに、右室梗塞では「右室拍出量低下→肺血流低下→左室前負荷低下→心拍出量低下→低血圧」という血行動態を理解すると、観察項目や治療上の注意点を整理しやすくなります。

【参考】
2025 ACC/AHA Guideline for the Management of Patients With Acute Coronary Syndromes
2023 ESC Guidelines for the management of acute coronary syndromes
日本循環器学会 急性冠症候群ガイドライン

概要 68歳男性。突然の胸痛で救急搬送された。12誘導心電図でⅡ、Ⅲ、aVFにST上昇を認める。血圧82/54 mmHg、脈拍58回/分。肺野に湿性ラ音はなく、頸静脈怒張を認める。この時点で特に疑うべき病態はどれか。





A.心室中隔穿孔
B.急性左心不全
C.右室梗塞の合併
D.急性心膜炎



回答

C.右室梗塞の合併

解説

右室梗塞は、急性下壁心筋梗塞に合併することが多く、特に右冠動脈近位部の閉塞で生じやすい病態です。右室の収縮機能が低下すると、右室から肺循環へ送り出される血液量が減少し、その結果、肺静脈を介して左室へ戻る血液量、つまり左室前負荷も低下します。そのため、左室そのものの収縮能が比較的保たれていても心拍出量が低下し、低血圧やショックを来すことがあります。

臨床で重要なのは、「低血圧」「頸静脈怒張」「肺うっ血が乏しい」という所見の組み合わせです。右室で血液が停滞すると右房圧・体静脈圧が上昇するため頸静脈怒張を認めます。一方、右室から肺循環へ送り出される血液量が減少するため、典型的な左心不全のような肺うっ血や湿性ラ音が目立たないことがあります。したがって、下壁ST上昇型心筋梗塞の患者が低血圧を呈しているにもかかわらず肺野が比較的クリアな場合は、右室梗塞を積極的に疑う必要があります。

心電図ではⅡ、Ⅲ、aVFのST上昇を認める下壁梗塞に右室梗塞を合併することがあります。特に右室梗塞が疑われる場合には、通常の12誘導心電図だけでなく右側胸部誘導を追加します。なかでもV4RのST上昇は右室梗塞を示唆する重要な所見です。下壁梗塞を確認した時点で血圧低下や頸静脈怒張があれば、早期に右側胸部誘導を記録することが重要です。

また、右冠動脈は房室結節への血流供給にも関与することが多いため、右冠動脈領域の下壁梗塞では洞性徐脈や房室ブロックなどの徐脈性不整脈を合併することがあります。そのため看護師はST変化だけを見るのではなく、心拍数、房室伝導、血圧、意識状態、尿量、末梢冷感などを合わせて評価し、心拍出量が維持できているかを継続的に判断する必要があります。

右室梗塞の循環管理で特に重要なのが「前負荷」です。右室収縮能が低下している状況では、十分な右室充満を確保することで心拍出量を維持している場合があります。そのため、静脈還流を過度に減少させると右室拍出量がさらに低下し、続いて左室前負荷も低下して血圧が悪化する可能性があります。硝酸薬など前負荷を低下させ得る薬剤は、特に低血圧を伴う右室梗塞では慎重な判断が必要です。

ただし、「右室梗塞=必ず輸液」という単純な理解にも注意が必要です。輸液は低容量が疑われる場合に検討されますが、過剰な容量負荷は右室をさらに拡張させ、心室間相互作用によって左室充満を妨げ、かえって心拍出量を低下させる可能性があります。血圧、頸静脈圧、肺うっ血、心エコー、末梢循環などを総合的に評価しながら循環管理を行うことが重要です。

この問題で覚えておきたいポイントは、「下壁梗塞+低血圧+頸静脈怒張+肺野が比較的クリア」なら右室梗塞を疑い、V4Rを確認するという臨床的な流れです。さらに、右室梗塞では「右室拍出量低下→肺血流低下→左室前負荷低下→心拍出量低下→低血圧」という血行動態を理解すると、観察項目や治療上の注意点を整理しやすくなります。

【参考】
2025 ACC/AHA Guideline for the Management of Patients With Acute Coronary Syndromes
2023 ESC Guidelines for the management of acute coronary syndromes
日本循環器学会 急性冠症候群ガイドライン