ACS(急性冠症候群)が疑われる患者では、12誘導心電図をできるだけ早く記録することが重要です。
ACSの中でもST上昇型心筋梗塞(STEMI)は、冠動脈の急性閉塞によって心筋虚血・心筋壊死が進行している可能性があり、再灌流までの時間が予後に大きく影響します。そのため、胸痛などからACSを疑った場合には、心筋トロポニンなどの採血結果を待つのではなく、速やかに12誘導心電図を記録します。目標は初回医療接触または医療機関到着後10分以内です。
また、初回の12誘導心電図が正常、あるいは明らかなST上昇を認めなかったからといって、ACSを否定することはできません。冠動脈の閉塞・再灌流や心筋虚血の程度によって心電図所見は時間とともに変化することがあります。そのため、胸痛が持続している、症状が再発している、ACSを強く疑うといった場合には、12誘導心電図を経時的に記録し、ST-T変化を確認することが重要です。
特に看護師は、胸痛の有無だけでなく、発症時刻、胸痛の性状、持続時間、冷汗、悪心・嘔吐、呼吸困難、血圧低下、不整脈などを確認するとともに、迅速に12誘導心電図につなげる必要があります。
ACSでは「トロポニンの結果が出てから心電図」ではなく、
「ACSを疑ったら、まず迅速に12誘導心電図」という考え方が重要です。
【エビデンス】
ACSでは、症状、12誘導心電図、心筋トロポニンなどを組み合わせて診断します。12誘導心電図は初期評価において重要な検査であり、STEMIなど緊急の再灌流療法を必要とする病態を迅速に判断するために実施されます。
また、初回心電図で診断できない場合でも、症状が持続・再発する患者では経時的な心電図評価が重要です。STEMIが疑われ緊急再灌流療法が必要な場合には、心筋トロポニンの結果を待つことによって再灌流療法を遅らせないことが重要です。
【参考文献・引用元】
・2025 ACC/AHA/ACEP/NAEMSP/SCAI Guideline for the Management of Patients With Acute Coronary Syndromes. Circulation. 2025.
・2023 ESC Guidelines for the management of acute coronary syndromes. European Heart Journal. 2023.