2024年4月11日(木)看護師クイズ 回答

概要 Forresterの分類を説明せよ
回答

肺うっ血の指標として平均肺動脈楔入圧18mmHg、末梢循環不全の指標として心係数2.2L/min/㎡を基準とし、4群に分類する

解説

1977年にJ. S. Forresterが考案した。

Swan-Ganzカテーテルより得られたデータに基づいて分類した、ポンプ失調の重症度分類である。

本来は、急性心筋梗塞に対して用いられたが、それ以外の急性心不全、あるいは慢性心不全の増悪期にも用いられる。この分類は、病態評価と治療方針決定に非常に有用である。

  • SubsetⅠは、肺動脈楔入圧18mmHg未満、心係数2.2L/min/㎡より大でポンプ失調を認めない。
  • SubsetⅡは肺動脈楔入圧18mmHg以上、心係数2.2L/min/㎡より大で、左室の前負荷が増加し心拍出量を維持している状態であり、肺うっ血を伴うが末梢循環不全は伴わない。
  • SubsetⅢは肺動脈楔入圧18mmHg未満、心係数2.2L/min/㎡以下で肺うっ血は認めないが、末梢循環不全を伴う。左室の前負荷が十分でなく、適正な補液が必要である。
  • SubsetⅣは、肺動脈楔入圧18mmHg以上、心係数2.2L/min/㎡以下で肺うっ血と末梢循環不全がともに認められ、最も血行動態の悪化した群である。
  • SubsetⅠ~Ⅳの死亡率はそれぞれ3%、9%、23%、51%であったとForresterは報告している。

治療法

  • subsetⅠは血行動態としては問題なく、鎮痛薬または鎮静薬の投与により経過をみてよい。
  • SubsetⅡは肺うっ血を軽減させる目的で利尿薬か血管拡張薬を投与する。利尿薬には従来よく使われているフロセミド(ラシックス®)の他にナトリウム利尿ペプチド(hANP)を使用する。
  • SubsetⅢは、肺うっ血はないが末梢循環不全を伴い、脱水や右室梗塞の可能性が考えられる。まず輸液を行い、心係数改善が遅延するようならカテコラミンを投与する。
  • SubsetⅣは肺うっ血と末梢循環不全を認め、利尿薬、血管拡張薬、カテコラミンを併用し、強力に治療する。薬物療法で効果が得られない場合は、IABP(大動脈内バルーンパンピング)、PCPS(経皮的心肺補助装置)などの補助循環も併用する。

注意点

Forrester分類の重要な視点は、急性心不全の評価を、肺うっ血と低灌流による末梢循環不全で評価しているところです。したがって、肺動脈カテーテルが挿入されていない患者さんでは、別の指標をCIとPAWPの代替とすればよいのです。

低灌流の指標としては、手足が温かいか、収縮期血圧25%以下の小さな脈圧になっていないか、平均血圧65mmHgが保たれているか、体重0.5mL/㎏/hの尿量が保たれているかなどが参考になります。肺うっ血の指標としては、起坐呼吸があるか、酸素化が悪化していないかなどで評価できます。

肺動脈カテーテルで得られる指標の代わりに、症状や身近な検査データを総合的に見たうえで、SubsetⅢあるいはSubsetⅣのような重症と判断される場合には、モニタリングや重篤化回避の対応を優先します。

 

執筆・引用:周術期セミナー (名古屋ハートセンター 小中野和也

概要 Forresterの分類を説明せよ
回答

肺うっ血の指標として平均肺動脈楔入圧18mmHg、末梢循環不全の指標として心係数2.2L/min/㎡を基準とし、4群に分類する

解説

1977年にJ. S. Forresterが考案した。

Swan-Ganzカテーテルより得られたデータに基づいて分類した、ポンプ失調の重症度分類である。

本来は、急性心筋梗塞に対して用いられたが、それ以外の急性心不全、あるいは慢性心不全の増悪期にも用いられる。この分類は、病態評価と治療方針決定に非常に有用である。

  • SubsetⅠは、肺動脈楔入圧18mmHg未満、心係数2.2L/min/㎡より大でポンプ失調を認めない。
  • SubsetⅡは肺動脈楔入圧18mmHg以上、心係数2.2L/min/㎡より大で、左室の前負荷が増加し心拍出量を維持している状態であり、肺うっ血を伴うが末梢循環不全は伴わない。
  • SubsetⅢは肺動脈楔入圧18mmHg未満、心係数2.2L/min/㎡以下で肺うっ血は認めないが、末梢循環不全を伴う。左室の前負荷が十分でなく、適正な補液が必要である。
  • SubsetⅣは、肺動脈楔入圧18mmHg以上、心係数2.2L/min/㎡以下で肺うっ血と末梢循環不全がともに認められ、最も血行動態の悪化した群である。
  • SubsetⅠ~Ⅳの死亡率はそれぞれ3%、9%、23%、51%であったとForresterは報告している。

治療法

  • subsetⅠは血行動態としては問題なく、鎮痛薬または鎮静薬の投与により経過をみてよい。
  • SubsetⅡは肺うっ血を軽減させる目的で利尿薬か血管拡張薬を投与する。利尿薬には従来よく使われているフロセミド(ラシックス®)の他にナトリウム利尿ペプチド(hANP)を使用する。
  • SubsetⅢは、肺うっ血はないが末梢循環不全を伴い、脱水や右室梗塞の可能性が考えられる。まず輸液を行い、心係数改善が遅延するようならカテコラミンを投与する。
  • SubsetⅣは肺うっ血と末梢循環不全を認め、利尿薬、血管拡張薬、カテコラミンを併用し、強力に治療する。薬物療法で効果が得られない場合は、IABP(大動脈内バルーンパンピング)、PCPS(経皮的心肺補助装置)などの補助循環も併用する。

注意点

Forrester分類の重要な視点は、急性心不全の評価を、肺うっ血と低灌流による末梢循環不全で評価しているところです。したがって、肺動脈カテーテルが挿入されていない患者さんでは、別の指標をCIとPAWPの代替とすればよいのです。

低灌流の指標としては、手足が温かいか、収縮期血圧25%以下の小さな脈圧になっていないか、平均血圧65mmHgが保たれているか、体重0.5mL/㎏/hの尿量が保たれているかなどが参考になります。肺うっ血の指標としては、起坐呼吸があるか、酸素化が悪化していないかなどで評価できます。

肺動脈カテーテルで得られる指標の代わりに、症状や身近な検査データを総合的に見たうえで、SubsetⅢあるいはSubsetⅣのような重症と判断される場合には、モニタリングや重篤化回避の対応を優先します。

 

執筆・引用:周術期セミナー (名古屋ハートセンター 小中野和也